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083 世界と自己と未来

●認知の3要素と戦略立案の3ステップ

精神科医で、うつ病の認知療法の創始者として認められている(Wikipediaより)アーロン・ベックが定義したという「抑うつ気分が高い人に特徴的な否定的認知の3要素」を見かけました。

  • 【世界】 「世間は不公平だ」
  • 【自己】 「私は人生の落伍者だ」
  • 【未来】 「もうまったく将来に望みがない」

抑うつ気分が高い人に特徴的な否定的認知の3要素 - *ListFreak

(この後の話につなげやすくするため、項目の順序を変えています)

なにしろ三幅対(3つで組になった概念)好きなので、三幅対そのものとしての美しさ・強さを鑑賞してしまいます。「『世界−自己−未来』は骨太でいい枠組みだな、人の『もののとらえ方』をチェックするモノサシとしてよさそうだな……」と思いながら眺めていたら、意外な枠組みとの共通点が浮かんできました。

それは戦略立案です。「世界−自己−未来」の要素に仕立て直したものをお目にかけます。

  • 【世界】 外部環境から読み取れる機会脅威は何か?
  • 【自己】 その世界における自己の強み弱みは何か?
  • 【未来】 機会を捉え脅威に備えるために、どのように強みを活かし弱みを補うか?

「認知の3要素」でまとめたSWOT分析の3ステップ - *ListFreak

事業でも個人としてのキャリアでも基本は同じですが、事業戦略の文脈で簡単に確認しておきます。
【世界】は、いわゆる外部分析のステップです。市場・競合・規制などの圧力などを把握して、そこで事業を展開していくうえでの機会と脅威を考えます。この段階では自社の事情を考慮せず、俯瞰的な視点を保つのが分析をややこしくしないポイント。
【自己】のステップでは、その世界における自らの強みと弱みを考えます。強み・弱みは多分に相対的なものなので、先に【世界】を考えておくわけです。
【未来】では、機会/脅威と強み/弱みからなる2×2のマトリックスを作り、できた4つのマスを埋めながら、機会を最大限に捉えて脅威を最小限に抑えるための戦い方を考えます。

リストのタイトルに示したように、このアプローチはSWOT分析として知られています。SWOTは強み(Strength)/弱み(Weakness)、機会(Opportunity)/脅威(Threat)の頭文字をつなげたもの。

ここで冒頭の「否定的認知の3要素」を、戦略立案の視点から整理してみます。うつな気分のときには:
【世界】に機会よりも脅威を多く感じ、
【自己】に強みよりも弱みを多く感じている。だから戦略を考える材料が少ないうえに、
それらを組み合わせて【未来】への戦略を発想する力事態が弱まっている。

これはつらいですね。なんだか論理療法めいた話になってしまいますが、【世界】には脅威だけでなく機会も、【自己】には弱みだけではなく強みも、存在することを確認しながら自分戦略を立ててみれば、自分の認知の偏りに気がつくかもしれません。

●「世界−自己−未来」の視点から合意形成のポイントをさぐる

戦略立案のステップを、人の「もののとらえ方」に重ねて定義できたという発見は、戦略立案において合意形成にいたる一定の道筋を見せてくれたように、わたしには思えました。

まず「【世界】 外部環境から読み取れる機会脅威は何か?」を考えるときには、お互いの【世界】観を理解することに焦点を当てます。たとえば、先ほどの「規制緩和が見込まれる」という情報について、こんな議論があったとしましょう。

機会派「一般的には、規制緩和で業界は活性化する」
脅威派1「一般的には、ね。そうでない業界もある」
脅威派2「一般的には、ね。その中で滅んでいく企業もある。ウチはそうなるんじゃないかな」

機会派と脅威派1は、同じ【世界】について異なる見通しを述べています。過去の事例を分析すれば、規制緩和で活性化する業界の特徴が浮かび上がり、「こういう条件であれば、規制緩和で業界は活性化する」といった、お互いに納得でき、かつ深い分析をともなった表現が作れるかもしれません。

一方、脅威派2は【未来】について言及しています。これは戦略立案のステップからいえば最後に検討されることがらなので、いまは保留にします。
「認知の3要素」は、原語では"cognitive triad"、つまり3つで1組という意味です。たとえ誰かに「【世界】は明るい」と言われても、「でも【自分】は弱いから【未来】は暗い」というように、3者が足を引っ張り合っている構造があるとすれば、このように戦略立案のステップに従って「もののとらえ方」も一緒に分解・整理できることは、実は大きなメリットのように思えます。

こうして「世界−自己−未来」と議論を進めていきます。これが戦略立案の論理的なステップであるだけでなく、各人の「もののとらえ方」の違いをもれなく洗い出せるステップでもあることが共有されるなら、論理的にも感情的にも納得の高い合意が導かれるのではないでしょうか。

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