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095 「一瞬」で組織を変える話(2)

●まずは実際に一拍置けるようになる

ある状況におかれて、次の行動を選択するまでの「一瞬」をどう改善するか。これはほんとうに深いテーマで、結論めいたことは書けません。ただこれまでの研究や実践から、すくなくともその一瞬で何をするかを考える前に、

「実際に一拍置ける」

ようになるのが最初に学ぶべきスキルである。これは間違いないように思います。

こう書くと、反射的に

「なんだ、もったいぶった挙げ句にそんな簡単なことか」

と感じられることでしょう。

しかし、ここで読むのを止めてしまったり、残りの文章を批判的な気持ちでしか読めないとしたら、それは反射的に沸き上がった感情に支配されたことにほかなりません。「一拍置く」スキルを開発する余地が多分にあるということです。

※ こう書くと、反射的に「なんだ、自分の文章の弁護かよ!」と感じられるかもしれません  が、どうぞ一拍置いて読み進めていただけると嬉しいです。なお、反射的に感情が沸き上がること自体は、良いことでも悪いことでもありません。人間はそのような情動システムを持っているのです。感情を感じないようにしようという話ではなく、感じた感情に振り回されないようにするという話です。

最近こんな経験がありました。TV番組である若いベンチャー社長のインタビューを観ていたときのことです。社長の言葉づかいがどうにも粗い。丁寧語がきちんと使えないのです。一度気になり出すと、もう話の内容そっちのけで、言葉づかいのチェックをしたくなってしまいます。本であれば読むのをいったん止めて一拍置けばよいのですが、ライブの会話を聞いているとそういうわけにもいきません。話の内容に集中するのに苦労しました。

それに比べると、今回対象にしている「何を、どう話すか」は、自分の努力で一拍置けるわけですから、まだ改善しやすいといえるかもしれません。一拍置くことの効果は、以前の「6秒間で思慮深さを取り戻す」をご参照いただくとして、今回はわたしが実践してきた工夫をいくつか紹介したいと思います。

 ●呼吸、リスト、沈黙

1つめは、呼吸です。ファシリテーターをしているとしばしば緊迫した状況になったり厳しい質問が飛んでくることがあります。鼓動が速くなるのを感じたら、口を閉じ、鼻を通る空気を感じながら大きめに呼吸をします(さすがに、いきなり深呼吸はできないので)。ゆっくりした呼吸は、それ自体副交感神経を働かせる、つまり自分をリラックスさせる効果があるそうですが、1回の呼吸でその効果があるかどうかは検証できていません。そういった生理学的な効果よりも、意識的な動作を加えることで「気持ちを落ち着けながら話を聞いている自分」が意識できるようになり、感情に巻き込まれるのを防ぐ効果が大きいと感じています。

2つめは、リストです。望ましい態度を1〜3項目にまとめたリストを用意して、口を開く前にそれを思い浮かべるようにします。項目は、役割やそのときの開発テーマに応じて入れ替えますが、常に使えるのは「3つの門」です。すなわち「その言葉は真実か、必要か、思いやりはあるか」という3つの門をくぐり抜けた言葉だけを口にするという教えです。ちなみに、これはわが家でもよく使われるリストで、皮肉屋のわたしはよく3つめの門を通過していない言葉を発したといって怒られています。

3つめは、すこし長めの間をとって一瞬を一拍から二拍に引き延ばすことです。これは簡単なことではありません。そもそもわれわれは沈黙に対する恐怖を持っています。こちらが間をとったとしても、相手はそれを居心地悪く感じ、新しい話題で埋めてしまうかもしれません。会話のスタイルが噛み合うまで、工夫が必要です。しかしやがては相手もこちらのスタイルに慣れてくれます。望むらくは「この人は言葉を選ぶ人だ」、そうでなければ「ちょっともっさり話す人だ」という感じで。わたしは上述の2つを実践したことで自然と間が空くようになり、間をつくる感覚がつかめるようになってきていると感じています。

そのほか、「6秒間で思慮深さを取り戻す」では、シックス・セカンズ(6秒数える)と感情のラベリング(沸き上がってきた感情を言語化する)という方法を紹介しました。

シックス・セカンズは、広義には「数秒の間を置く」というテクニックですので、上の実践である程度できていると言えるかもしれません。一方、それが数字であれ花の名前であれ、状況から離れてまったく違うものの数を6つも数えることは、会話や思考の流れを断ち切ってしまうように感じます。ですので意識的にその断絶が必要な局面、たとえば何を言い出すか自分でも分からないというくらい感情が激したときに、特に有効な方法のように思えます。ただ幸か不幸か、まだライブで試す機会には恵まれていません。

感情のラベリングは、1つめに挙げた呼吸の際に、自分を客観視するという感覚の中である程度は実践できているように思います。しかし現場で、たとえば不意を突かれて答えに窮している瞬間に「焦っている」といった言葉を思い浮かべているかというと、それはできていません。したがって、残念ながら効果は未検証といわざるをえません。

次回は、そうやってつくり出した一拍の中で何をするかという点についてまとめたいと思います。

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