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108 次の一手と、その次の一手

●ドミノ倒しを理解するには3つの牌が必要

『いかにして問題をとくか・実践活用編』という本に、面白い話が載っていました(1)

ドミノ倒しを、それを知らない人にどう教えるか。著者は図の(ア)ではなく(イ)の状況で説明することが決定的に重要と言います。

(ア)
A B
|→|

(イ)
C D E
|→|→|

なぜ(イ)でなければならないのか。著者の分かりやすい説明を引用します。

(ア)では、倒すAと倒されるBの関係だけである。しかし(イ)では、倒すCと倒されるEはそれぞれA、Bと同じであるが、Dは違う。DはCによって倒されると同時にEを倒しているので、「倒されると同時に倒す」働きをする牌である。そのような牌の存在を強調して説明することが、ドミノ倒し現象を教える核心である。したがって、3個の牌がある(イ)の状況で教えることが大切なのである。

●シニアリーダーへの難所は「ドミノ倒し」ができるか

ドミノ倒し現象を理解するには、2つではなく3つの牌が必要。しかし3つの場合について理解できれば、それより大きな数の場合についても理解できる。この話を面白いと感じたのは、リーダーの仕事の難しさを象徴しているように思えたからです。

ここにあるプロジェクトがあるとします。往々にして、1つのプロジェクトの中には複数のチームがあります。とすると組織的には、まずメンバーがいて、メンバーを束ねるチームリーダーがいて、チームリーダーを束ねるプロジェクトリーダーがいる、という構図になります。

プロジェクトリーダー → チームリーダー → メンバー

プロジェクトリーダーの仕事にあってチームリーダーの仕事にはない、プロジェクトリーダー固有の難しさは何か。それは、プロジェクトリーダーは「チームリーダーを通じて」メンバーをリードするところです。先の図でいえば、チームリーダーはAの牌、プロジェクトリーダーはCの牌です。

プロジェクトのめざすビジョン、大事にしたい価値観、スケジュールを考えたときの危機感。そういった感覚を、人を介して共有する。この難しさは上級管理職独特のものです。目の前の相手から共感を得るのが得意な人でも、それを伝播する術に長けているとは言えません。

実際、このような組織構造を作って疑似プロジェクトを推進する、大がかりな研修のファシリテーターを務めたことがあります。歩き回ってメンバーに直接話しかけていったプロジェクトリーダーは、チームリーダーから「頭越しはやめてくれ」と苦情を言われました。すべてをチームリーダー越しにやろうとしたプロジェクトリーダーは、メンバーから「トップの考えが見えない」「御簾の向こうにいるようだ」と批判されました。

しかし、一度この苦しい経験を乗り越えると、プロジェクトリーダーの視界は開けます。「牌が3つの場合」を理解したので、これから牌(=コミュニケーション階層)の数が増えていっても対応できそうだという自信が持てるということです。

●次の次を考えてから、次を決める

ドミノ倒しの話が出てくるのは「帰納的な発想を用いる」という章です。帰納とは『観察や特殊な事例の組み合わせから一般的な法則を発見する手続き(章扉より)』のこと。ドミノ倒しの事例は、2枚の牌だけをにらんでいても法則は発見できないこと、かといって4枚以上は不要であることを、教えてくれます。リーダー研修の事例からは、チームリーダーとしての経験だけからプロジェクトリーダーに必要な能力を類推するのは困難であること、かといって束ねる組織が一段上がるごとにトレーニングが必要なわけではないことを、学びました。

自分と目の前にあるものだけでなく、その先にあるものを見て法則を理解するという帰納的な発想は、わたしに『「次の次」を考える』という転職のルールを思い出させました(2)。転職にあたっては、「次の次」に就いていたい職を考え、それに向けたステップとして「次」を考えようということです。考えてみればこのルールも、たった2ステップではあっても、「次」だけを探していたのでは見えないキャリアの大きな方向性を自分に考えさせてくれる、帰納的な発想と言えるでしょう。

これらの学びをさらに一般的な意思決定に敷衍すると、「次の一手を打つときは、その次の一手で到達したい地点を考え、そこに向けた最善の打ち手であるかをチェックせよ」というルールが導けそうです。


(1) 芳沢 光雄『いかにして問題をとくか・実践活用編』(丸善出版、2012年)

(2) 堀内 浩二「シンプルな転職のルール

 

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