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122 動揺を切り抜けるためのSOS

●心理的恐喝(ブラックメール)

心理的恐喝(ブラックメール)とは、『身近な人物が、直接的・間接的に、自分の思い通りにさせてくれなければあなたを罰すると脅すことで、わたしたちの心を操ろうとするときに使う、強力な手段のことである』。

セラピストのスーザン・フォワードは、心理的恐喝をそのように定義したうえで、恐喝者が突いてくるポイントを3つ挙げています。

  • 恐怖心 (Fear)
  • 義務感 (Obligation)
  • 罪悪感 (Guilt)

心理的恐喝の3つの武器(FOG) - *ListFreak

著者は恐喝される側をブラックメールの「受信者」と呼び、一貫して受信者の味方として本書を書いています。しかし、送信者にならないように気をつけることも大事です。なぜなら、受信者がまた送信者にもなり得るからです。そう考える理由は2つあります。

1つめは、心理的恐喝は無意識的に行われ得るものであること。恐喝かどうかは、主に受信者の感じ方に依存します。受信者が、恐怖心・義務感・罪悪感をあおられて送信者の要求に屈したと感じたならば、送信者に悪意がなくても心理的恐喝が行われたことになります。

2つめは、コミュニケーションのやり方そのものが無意識的に再生産され得ること。人は、受信者として学習したコミュニケーションのやり方を、違う相手には発信者として利用します。子どもや部下が親や上司の論法を身につけてしまうように、コミュニケーションのスタイルは再生産されるのです。

●動揺を切り抜けるためのSOS

本書には心理的恐喝をしてくる相手への対処方法がたくさん載っています。なかでも、シンプルな"SOS"というリストが印象に残りました。

  • Stop(止まる)】すぐに反応しない。時間を稼ぐ。距離を置く。
  • Observe(観察する)】状況を視覚化する。相手の要求、それに対する自分の思考と感情を観察する。
  • Strategize(戦略を練る)】自己防衛的にならない、相手を味方に変える、取引をする、ユーモアを使う。

厳しい要求に対応するための"SOS" - *ListFreak

心理的恐喝とまではいかなくても、交渉や商談など感情のマネジメントが必要なコミュニケーションは日常的にあります。たとえば相手に返答をせっつかれるなど心理的に圧迫を受けたときには、このコラムで繰り返し述べているように、とにかく「一拍置く」ことが、われわれに備わったEQを発揮して最善の行動を選択するうえでとても重要です。

SOSは覚えやすくてよいのですが、2つめのSがStrategize(戦略を練る)ではやや覚えづらいので、行動を「選ぶ」という意味でSelectに置き換えたうえで、私家版のSOSを作ってみます。 解説部分には「EQ4つの感情能力」、つまり気持ちを感じる/つくる/考える/活かす を組み込みました。

  • Stop(止まる)】一拍置いて情動をやり過ごす。感情にまかせて反応しない
  • Observe(観察する)】状況・自他の感情を観察し、隠れた意図や要求を考える
  • Select(選択する)】目的を考慮し、最善の行動を選ぶ

動揺を切り抜けるための"SOS" - *ListFreak

講師の仕事をしていると、リアルタイムで返答をしなければならない状況がよく発生します。そこで、このSOSのリストを作ってしばらくの間実務で試してみました。

このように効果的に一拍置くリストを持たないとどうなるかというと、思考がいきなりSelectに飛んでしまいます。しかも、相手の言葉を表面的に捉えた反応になりがちです。たとえば、何回かの連続講義の冒頭で、ある参加者が手を挙げてかなり些末な質問をしてきました。反射的に驚きや困惑、お恥ずかしいことには若干の怒りも浮かんできます。「は?そんなことどうでもいいよね?」という感じです。もし反射的にそんな行動をSelectしてしまったら、もはや挽回不可能です。

いったんS(止まる)、そしてO(観察)して、気づくことがありました。質問の内容が重要なのではなく、カジュアルに手を挙げて質問することで参加意識を表明すると同時に、場の雰囲気を活発にしようとしてくれているのではないか、と思い至ったのです。

そこで質問への感謝を述べ、他の参加者からの意見も募ったうえで、ていねいに回答するというアプローチをS(選択)しました。それだけが原因かどうかはわかりませんが、少なくともそれがきっかけで、その方は活発な発言でグループやクラスの議論に貢献してくださいました。

「止まる」そして「観察」するという、何も考えずに踏めるステップが前段にあるのがよいところです。これがSを「考え」、次にOを「考え」、最後にSを「考え」て行動する……といったステップだったら、 会話の中で使うというわけにはいかなかったでしょう。

 

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