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125 経験のダークサイド

●イノベーターと抵抗勢力の分岐点

経営コンサルタントを経て独立した細谷功は、新著『会社の老化は止められない』で、個人および組織がどのように自己再生を図りうるかを考察しています(1)。 その中で、「常識」をキーワードにした分かりやすく面白い議論がありました。簡単に紹介します。

仕事を始めたばかりの知識も経験も少ない状態は「未常識」。やがて知識を蓄え経験を積んで、時代や業界の「常識」を身につけます。細谷は『ここで大きく路線が二つに分かれる。一度身につけた常識で一生やっていこうとする人と、それを活用しながら再構成してリセットできる人である』と述べ、前者を「過常識」、後者を「超常識」と命名しています。

未常識、常識、過常識、超常識イノベーションを生み出せるのは「未常識人」(の一部)と「超常識人」です。どちらも「非常識」に見えるという面白い指摘をしているのですが、このノートでは割愛します。一方、「過常識人」は「抵抗勢力=アンチイノベーター」と化していきます。イノベーションとは変化であり、変化は「過常識人」が寄りかかっている思考の土台を崩すからです。右図はここまでの話の図解です。

読みながら「経験のダークサイド」という言葉が浮かんできてしまいました。ダークサイドに落ちない、図でいえばV字に成長するためには、どうすればよいのでしょうか。

細谷は「上位概念」に行くことが重要と述べています。これはわたしの理解では、自分の常識をより大きな目的の手段とみなして知識を再構成することを意味しています。

●経験のダークサイドに落ちないために

わたしも自分なりに、経験のダークサイドに落ちないためのステップを考えてみます。

まず、自分が「過常識」状態であるかどうかに気づくこと。 ここが最初にして最難関のステップのように思います。なにしろ常識とは空気のようなものですから。わたしに思いつけるのは、怒りやいらだちといった情動を観察することです。「非常識」な言動に出合うと、人は怒りやいらだちを感じます。それは自分の「常識」とのズレが発するシグナルですから、「非常識」な言動を鏡として自分の「常識」に気づくことができるはずです。

次に、その情動の由来を考察すること。イノベーションとは変化、つまり何らかの「非常識」であることを、われわれは頭では理解しています。ですから、たとえば「このままこの非常識なアイデアを受け入れたら何が起こるか?」といった問いを立て、自分の「常識」を棚に上げて考えてみる努力をしなければなりません。「非常識」の一部である「未常識」の持ち主、つまり知識や経験の浅い人(部下など)の発想にも学ぶべきでしょう。

思考スキルとしては細谷の言う「上位概念に行く」ことが必要ですし、感情スキルとしてはオープンネスを高める必要があります。とても難しいチャレンジです。

●未過超(みかちょう)のフレームワーク

常識の話からは離れますが、この「未常識・過常識・超常識」というトリオに惹かれるものを感じました。任意のテーマに「未・過・超」を付けて考えの幅を広げるといった使い方はできないでしょうか。たとえば:

  • 交渉スキルの未交渉 → 交渉 → 過交渉とは、そして超交渉とは何か。
  • セールスにおいて未セールス→セールス→過セールスとは、そして超セールスとは何か。

ポイントは、「超」は一見すると「未」に似ているというところです。どれだけ似ているか、細谷の挙げる例を引用します:

  • 「未常識」と「超常識」は規則を守らない
  • 「未常識」と「超常識」は無知を恥じない
  • 「未常識」と「超常識」は空気を読まずに正論を吐く
  • 「未常識」と「超常識」は「ヒマ」である(「常識人」は「忙しい」が口癖)

きっと「超交渉人」は交渉スキルを使っていないように見えるし、「超セールス人」は売っていないように見えるでしょう。進化を果たすと古いものが戻ってきたように見えるという点は、田坂広志のいう「事物の螺旋的発展の法則」の事例の一つのようにも思えます(2)

 

(1) 細谷 功『会社の老化は止められない――未来を開くための組織不可逆論』(亜紀書房、2013年)
(2) たとえば田坂 広志『使える 弁証法』(東洋経済新報社、2005年)

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