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145 効果、対費用

【こういうことがしたいから】

長女(高校生)の担任の先生は、学級新聞と生徒向けのメールニュースを毎日書かれています。A4用紙1枚両面の学級新聞は生徒に配布されるだけでなくダウンロードもできます。メールニュースは親も購読できます。

先日のメールニュースでは、文化祭のクラス企画がなかなかまとまらないことについて、こんなコメントをされていました。一部表現を変えて引用します。

AはいやだからB。CがいやだからA。
そういう発想ではなく、「こういうことがしたいから●●」という考え方でいきたいですよね。

よく、費用対効果といいます。文化祭の場合、

  やりたいこと(面白さ) / いやな要素(準備の大変さ、当日の拘束時間の長さ)

が大きな演し物が選ばれるはずです。先生のコメントは、分母に目が向きがちだった議論を俯瞰し、分子にこそ目を向けるべきだと呼びかけるものです。
オブザーバーとして議論を観察していたであろう先生の鋭いコメントに感心しつつ、生徒の気持ちに共感もできて苦笑いしてしまいました。

仕事でも、よく似た状況に陥ります。たとえば、あるチームが半年後の展示会の企画を考えているとします。業界に存在感を示し続けるのが重要という社長の信念によって出展はすでに決定されていて、何をするかがそのチームに任されている状況です。
考えあぐねているうちに、展示会の日が近づいて来ます。準備期間が短くなるにつれて、いろんな制約が出てきます。人を確保できるか、新しい商品を揃えられるか、予算内におさめられるか、などなど。そういった制約が、できることを否応なく狭めていきます。そして消去法的に選択肢が1つになった時点で、なかば自動的に合意が形成されます。たとえば「昨年どおりでいくしかない」と。

展示会の企画を選ぶための費用対効果は、まあ文化祭と似たようなものですが、社会人バージョンらしく要素を増やしてみます:

  (期待効果×実現可能性)/(費用×リスク)

展示会の企画チームも、やはり分母ありきの意思決定をしてしまったといえるでしょう。

【費用対効果でなく、効果対費用】

展示会の企画は、上から降りてきた案件ということもあり、チームメンバーは「こういう効果が得られればすばらしい」という期待を醸成するのが難しかったかもしれません。
もしあなたがチームのリーダーだったら、先生が生徒に視点のチェンジを促したように、チームの視点を分子に、つまり期待効果に向けるよう促すべきです。

たとえば、もし検討の早い時点で「費用対効果ではなく、効果対費用を考えてみよう」と仲間に声をかけられたら、どうでしょうか。ちょっとした言葉の遊びではありますが、制約が高まるのを待って検討するアイディアを減らそうという発想から、そもそもどんな効果を期待したいかという発想へと、ちょっとしたシフトを促せるかもしれません。

【比の大きさよりも、分子の大きさを考える】

ふたたび文化祭の例に戻ります。たとえば分母(いやな要素)を1に固定してしまうと、分子(面白さ)に持ってこれるのはせいぜい2の企画でしかなく、4の企画は思いつくことすら難しくなってしまいます。
一方で、分子が大きい企画は、えてして分母も大きいものです。いくら分子が4でも分母が2だったら、それは2/1と同じ、だから2/1案でいいじゃないかと、賢い生徒は言うかもしれません。

でも実は、分子の絶対値が大きい方が、直後の充実感や長い目で見たときの満足度が大きいことを、先生は長い経験から知っているはずです。もし2/1案と4/3案があれば、4/3案を推すのではないかと、勝手ながら思います。

ビジネスも、比だけでは判断できません。費用対効果の高い、つまり手間をかけずに儲けられる仕事があるとすると、それは現在の顧客の需要に自社がうまく応えられているからです。しかしそこに安住してしまうと、将来の変化についていかれません。次の成長の種は、ストレッチ・プロジェクト、つまり3かかるけど4得られそうな大変な仕事の中で拾えることが多いように思います。

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