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016 決めたくなり方において賢明であれ

●本は「読みたい自分」に聞いて選ぶ

発想豊かな随筆の名手として知られる丸谷才一氏が、読む本の選び方について曰く。

 僕もよく「どうやって本を選べばいいんですか」という質問を受けることがあります。しかし、これは、読みたい本を読むしかないんですね。

 言葉の言い換えみたいだけど、問題は「どういう本を読みたくなるか」というところにあるんじゃないでしょうか。要するに「本の読みたくなり方において賢明であれ」と言うしかない。

― 丸谷才一 『思考のレッスン』 文春文庫

「こんな本が読みたい」と思っている自分、つまり「読みたい自分」が分かっていれば、「どんな本を選ぶか」という答えは出ているはずです。「どうやって本を選ぶか」はその先にある技術論に過ぎません。

ところが人は、「読みたい自分」を探すために本を読む。本を読んでいる間は考える(自分の中に答えを見出す)ことができないので、いくら読んでも満たされない。とすると、読む本を選ぶために必要なのは、自分はどんな本を読みたい人間なのかを自分の頭で考えることなのでしょう。丸谷氏はそのあたりの機微を、持ち前の軽妙さでこう表現していました。

 ほら、昔から、散歩しながら考えるといい、というでしょう。あれは散歩をしているときは、本を読むわけには行かないからいいんです。アルキメデスはお風呂に入っていてあの原理を発見した。たぶん彼は風呂の中では本を読んでなかったはずです(笑)。―(中略)―とにかく本を読んでいる最中にいいことを思いつく人はめったにいない。

 もう一ぺん同じことを言いますと、いままで生きて、読んで、かつ考えてきた。そのせいで一応手持ちのカードはあるんですよ。その手持ちのカードをもう一ぺん見ましょう。

●「決めたくなり方において賢明であれ」

丸谷氏が語っていたのは、読むべき本の選択についてです。これを進むべき道の選択と置き換えてみると、我々の意志決定のあり方を考えるヒントになりそうです。

たとえば、部下に意志決定の方法論をいくら教えても決断力がつかない、という場合。問題は知識が少ないことではなく、決めたいと思っていないことにあるのかもしれません。

冒頭の引用文を、こんな風に言い換えてみます。

僕もよく「どうやって決めればいいんですか」という質問を受けることがあります。しかし、これは、決めたいように決めるしかないんですね。

言葉の言い換えみたいだけど、問題は「どれに決めたくなるか」というところにあるんじゃないでしょうか。要するに「決めたくなり方において賢明であれ」と言うしかない。

「決めたくなり方」というのは、決めるということに対する態度あるいはスタイルです。たとえば、決断力の高さを評価されている元ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ氏は、即断即決タイプではありません。すぐに考え始めるが、ぎりぎりまでは決めないと言っています。

「多くの人は宙ぶらりんの心地悪さから解放されたくて、即断の誘惑にさらされるが、決断に時間をかければかけるほど、結果は賢明で理にかなったものになるはずだ」(ルドルフ・ジュリアーニ 『リーダーシップ』 講談社)

氏のスタイルだけが正解だということではありません。自分の決断スタイル(決めたくなり方)を意識する。決断後、そのプロセスを振り返る。飛躍や偏りがあれば反省し、次回の決断に活かす。そういった実践の繰り返しの中から生まれる自分なりの決断スタイルを持つことが、限られた時間・予算・資源の制約のなかで決断をしていかなければならないマネジャーにとって重要なのだと思います。

最後に、決断スタイルに影響を与える変数をいくつか考えてみました。こういった要素の組み合わせが、決断スタイルをかたちづくっていくのではないでしょうか。

  • 独りで決めるか、合意を重んじるか?
  • 少しずつ決めるか、一気に決めるか?
  • 退路を残すか、退路を断つか?
  • すぐに決めるか、期限いっぱいまで保留するか?
  • 結果を重視するか、プロセスを重視するか?
  • 直感を重んじるか、排除するか?
  • 定量的な根拠を重視するか、定性的な根拠を積極的に採り入れるか?
  • 決断にあたって、何をどの順番で重視するか?(経済性、効果の持続性、ビジョンとの一致性、倫理性など)

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