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023 「方向性」のために払うべき犠牲

●敢えてトップダウンに切り換える

あるベンチャー企業の社長から、こんな話をおうかがいしました。

「ご縁があって、いまの会社の経営を担う一員として転職してきた。それ以来、社員の総意をまとめ、一体感を創り出そうと努力してきた。数年後、社長に就任した。以前にも増して社員の声をよく聞くように努めたが、どうしても「ぬるい」雰囲気から脱し得ない。

強い危機感を持ち、悩み抜いた末に、思いきってこれまでの合意形成スタイルを変えてみた。まず自分のビジョンを作り、主要なメンバー一人ひとりと話し合った。この方向で一緒にやってくれるかと。どんな重要人物であっても、合意が得られなければ退職を促すことも辞さず、という覚悟で臨んだ。

果たして、腹心ともいえる部下が離職する事件も起きた。しかし、総じていえば、社員の一体感は増した。事前の心配に反し、どことなく沈滞していた組織が明るくなった」

●「方向性」には副作用がある

トップダウンで方向性を打ち出すことに成功した事例を挙げましたが、このコラムで書きたいことは、方向性を決める方法についてではありません。方法を問わず、方向性を決めるときに組織が払う犠牲と、マネジャーが背負う負荷についてです。

ある方向に行くということは、別の方向には行かないということです。「ビジョンを共有しよう」「ベクトルを合わせよう」と、言うのは簡単ですが、実行は難しい。

あいまいに共有していた方向性が明らかになるにつれて、組織内で反発や失望が生まれる可能性があります。期待を裏切られて「こんな会社じゃなかった」「会社は悪い方向に舵を切っている」という声も上がるかもしれません。

もとより、個人のベクトルが組織のベクトルと100%合うことはない。それは、多くの個人が(頭では)承知しています。ベクトルの合いぐあいが、個人のライフステージや会社の成長ステージによって変わってくることも。

ビジョナリー・カンパニーはカルト的な文化を持っています(1)。方向性をはっきり持った組織ほど、「人を選ぶ」傾向が強くなるということです。

マネジャーが「組織の方向性を合わせよう」というとき、そこには「合わせられない人は組織から離れるかもしれない」というリスクを受け止める覚悟がなければなりません。

●「ぬるま湯快適派」との対決

自分なりの方向性を持って組織にぶつけてくる人は、健全といえるでしょう。その結果組織と袂を分かつことになったとしても、それは互いに最善を尽くした上での選択として納得できるはずです。

一方で、とにかく現状維持が目的化してしまう人たちも、残念ながら出てきます。意志決定者たちによる「合宿」の効用を説く『戦略キャンプ―2泊3日で最強の戦略と実行チームをつくる』という本では、そのような人たちを「ぬるま湯快適派」と呼んでいます。

俗に言う「ぬるま湯快適派」は、合宿が嫌いである。徹底的に理詰めでやられると、これまで逃げてきた問題に踏み込まざるを得なくなる。すると、自分の仕事や責任がまた増える。また、理詰めの議論で部門間の対立があらわになることを嫌う人もいる。ぬるま湯快適派の人たちは、相互不可侵条約を結んでいることが多いのだ。
― 森田 元、田中 宏明、佐藤 俊行 (著)、松山 雅樹 (監修) 『戦略キャンプ―2泊3日で最強の戦略と実行チームをつくる』(ダイヤモンド社、2009年)

「ぬるま湯快適派」の戦術は多岐にわたります。インフォーマルなロビー活動、面従腹背、うわさ話による攻撃など。組織の変革においては入念な準備とスピーディな実施が求められる理由の少なからぬ部分が、ここにあります。

(1) ジェームズ・C. コリンズ、ジェリー・I. ポラス 『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』(日経BP社、1995年)


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