● 中学生にも役に立つ、ピラミッド・ストラクチャー
『自分の答えのつくりかた』(1)という、自立した個人として考えるために必要なスキルや態度を教える本を読みました。半分物語仕立てになっていて、主人公のピンキーは魚の世界の中学生。ピンキーはさまざまな挑戦や事件を通じて、主観だけに頼らない選択のやり方や、自分なりの主張を構築する方法を学んでいきます。
ピンキーが会得する思考ツールに、ピラミッド・ストラクチャー(2)があります。主張と根拠のセットを多段階に(ピラミッドのように)積み上げることで、自分にも他人にも分かりやすい論理が構築できますし、相手の論理の妥当性をチェックすることもできます。この本がそうであるように、基本的な考え方は中学生でも十分に理解できる発想です。実務で活用されている方も少なくないのではないでしょうか。
この本では、歴史の先生が質問によって生徒に考えさせ、自分なりの論理を構築するのを手助けします。マネジャーの皆さんも、この先生と同じアプローチを職場で用いることができるでしょう。
●考えに筋を通すための、4つの問いかけ
そのためには、次のような質問を注意深く使い分ける必要があります。
- 解釈や主張を促す「それで?」
- 主張の根拠を掘り下げる「なぜ?」
- 根拠の確からしさを確かめる「本当?」
- 論理の完成度を高める「他には?」
考えに筋を通すための、4つの問いかけ – *ListFreak
どれも、武器にもなれば凶器にもなる質問ばかりです。以下、ひとつずつ見ていきましょう。
▼解釈や主張を促す「それで?」
たとえば、状況報告に終始しがちな相手から意見を引き出すための問いかけです。状況報告だけでは満足していないことを示すために、「それって要するに……?」「ということは、つまり……?」など、相手の話を促すような問いかけをしていきましょう。
一つの会話にいろんな主張が入ると、お互いに整理できなくなってしまいます。ピラミッドの頂点を探すつもりで、重要な主張に絞っていく姿勢が必要です。
▼主張の根拠を掘り下げる「なぜ?」
「なぜ?」は、論理的思考の代名詞のような問いかけですね。論理的思考の研修に出た上司から「なぜ?」攻めを受けて困った、という部下の方の話を聞いたことがあります。
これもピラミッドをイメージしながら聞くとよいと思います。「なぜ?」「なぜ?」と問い下がっていくことは、どんどんピラミッドの下層に降りていくことに他なりません。いまそれが必要な局面なのか、それとも上位の論理構造をしっかり押さえるべきなのかといったバランス感覚が求められます。
掘り下げていく場合には「ここは重要なところだからよく考えてみたいんだが、なぜ……?」などと、意図を明らかにしながら会話をリードしないと、質問されたほうは、ただ重箱の隅をつつくような質問をされていると感じるリスクがあります。
▼根拠の確からしさを確かめる「本当?」
要するに、根拠となっている情報や仮説がほんとうに根拠たり得るのかを確認するということです。片っ端から確認していくだけの時間はないでしょう。根拠が根拠になっていなさそうなところでしっかり質問して、根拠の正当性を重視する姿勢を印象づけるといった使い方が有効ではないでしょうか。
▼論理の完成度を高める「他には?」
「なぜ?」と聞いて、3つの根拠が出てきたとします。その3つの根拠で本当に判断してよいのかを一緒に考えるための質問です。この質問によって、相手がどれくらいねばり強く考えてくれているかどうかをうかがうことができるでしょう。
すでに自分なりの論理を組み上げている相手に対しては、ただ「他には?」と聞いても考えが進まないかもしれません。「他にどんな議論があった?」「他に、たとえば○○という視点から見ると……?」など、考える材料を渡す準備をしておくとよいと思います。
(1) 渡辺 健介 『自分の答えのつくりかた―INDEPENDENT MIND』 (ダイヤモンド社、2009年)
(2) バーバラ ミント 『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』 (ダイヤモンド社、1999年)