● ハーフアンサー法
心理カウンセラーの衛藤 信之氏は、「ハーフアンサー法」という問題解決のアプローチを提案しています。ベストアンサー(完璧な答え)ではなくハーフアンサー、つまり「完璧ではなくとも、解決できそうな魅力を持った答え」を考えて、試していこうということ。なんとなく和製英語っぽい響きですので、氏の造語かもしれません。それはともかく、「ハーフアンサー法」はこのようなプロセスとして定義されています(1)。
- 問題点の整理
- 協力者への誘いかけ
- ブレーンストーミング
- ハーフアンサーを出す
- まず実行してみる
- ベストアンサーに近づける
3.のブレーンストーミングは「上司と部下が協力して、問題解決のためのアイデアを出し合う」ステップとなっています。分析的な問題解決のプロセスではその前に「問題の定義→分析→原因追及」といった手続きがあってしかるべきですが、それらはすべて1.に押し込まれています。「ハーフアンサー法」は、そういったアプローチと比較すると、ずいぶん乱暴なやり方のようにも思えます。
しかし、こういったカジュアルなアプローチには、当事者の心理的なハードルを下げられるという大きなメリットがあります。マネジャーとしては、確度の高い打ち手が見つからないことよりも、部下がやる気を持って問題解決に取り組んでくれないことのほうが、大きな問題だと感じる場合もあるかもしれません。そんな場合には「ベストアンサーでなく、ハーフアンサーでいい」と宣言するだけで、部下はリラックスできそうです。
●アイデア出しは、そのプロセス自体に効用がある
ユニークなネットサービスを連発している面白法人カヤックを率いる柳澤 大輔氏も、ブレーンストーミングによってとにかくアイデアを出してみようと提言しています(2)。
一つの理由は、いわゆる「量が質を生む」からなのですが、氏はもう一つの理由を重視しています。それは「仕事が楽しくなるから」。アイデア出しは、そのプロセス自体に「楽しい」という効用があり、それが組織における好循環の原動力になるといいます。
もちろん、分析的な問題解決のアプローチにも、こういったカジュアルさを持ち込む余地はあります。いきなり打ち手のアイデアではなく、問題分析の切り口をブレーンストーミングで出していってもいいわけです。
重要な意志決定の責任を引き受けることがマネジャーの仕事ではありますが、それを受けて実行するのは組織のメンバーです。意志決定のプロセスに部下を参加させるために、「敷居を下げる」工夫を施す余地は、まだまだ残されているのではないでしょうか。
(1) 衛藤 信之 『上司の心理学―部下の心をつかみ、能力を高める』(ダイヤモンド社、2000年)
(2) 柳澤 大輔 『アイデアは考えるな。』(日経BP社、2009年)