望ましくない結果に陥れば、そこから抜け出るために原因を考えます。好調であれば、それを維持するために、やはりその原因を考えます。マネジャーの意志決定プロセスには、こういった原因の推察が欠かせません(1)。
しかし、不完全なデータから原因を考えるわけですから、そこには個人の主観が入ります。そういった因果関係のとらえ方のクセを整理できる、よい「軸」があります(2)。
- 内外軸(内的/外的):原因を自分に帰属しがちか、自分以外の何かに帰属しがちか
- 時間軸(永続的/一時的):同じような状況では、いつでもその原因が同様の結果を繰り返しもたらすと考えがちか、それとも違う可能性が高いと考えがちか
- 空間軸(全体的/部分的):その原因が他のあらゆる局面にも関わると考えがちか、その特定の状況だけに限定されると考えがちか
- 可能軸(可変的/固定的):ある結果の原因を自分でコントロールできないものに帰属しがちか、コントロールできるものに帰属しがちか
因果関係のとらえ方のクセを測る4つの軸 – *ListFreak
簡単な例で考えてみます。あなたはマネジャーとしてプロジェクトのキックオフミーティング(プロジェクト開始時の打ち合わせ)で短いスピーチを行いましたが、残念ながらメンバーの反応は芳しいものではありませんでした。
まず、そのスピーチを失敗と捉えるか成功と捉えるかのレベルも、人によって違います。メンバーの反応が同じでも、失敗と捉える人とそうでない人がいて、後者の場合にはそもそも問題として認識されないわけですが、ここでは失敗だったと認めざるを得ないほど反応が悪かったとしましょう。
- 内外軸(内的/外的):スピーチの失敗は自分が口ベタだったせいだ/自分以外の何か(例:会場が暑くて小さくて暗かった)のせいだ
- 時間軸(永続的/一時的):次回のプロジェクトでもこの口ベタのせいで同じ失敗をしそうだ/次回は大丈夫だろう
- 空間軸(全体的/部分的):この口ベタのせいで、営業プレゼンも社内研修の講師も失敗しそうだ/ほかの機会では大丈夫だろう
- 可能軸(固定的/可変的):この口ベタは性格だから直らない/練習すればうまくなるだろう
抑うつ傾向のある人は、そうでない人に比べて内的・永続的・全体的・固定的な原因帰属をしがちだということが知られています(2)。一方で、抑うつ傾向のある人のほうが論理的に「正しい」原因帰属ができているという研究結果もあるそうです(2)。また、思考課題の成績はそのときの感情によって左右されるという研究もあります(3)。
軸のどの辺に位置するのがよいという一元的な指針はありません。仕事の種類によっても、望ましい偏りぐあいは違ってくるでしょう。たとえば、もともと低い成功率が想定される(セールスなどヒト系の)仕事では、失敗がほとんど許されない(オペレーションなどモノ系の)仕事のように精密には原因追究ができません。精神的にも保たないのではないでしょうか。
研修ベンダーなどに相談すれば、自分の相対的なクセをつかむようなエクササイズを設計してくれるでしょう。日常業務のなかでは、自分と他人の原因帰属の違いを測るような機会がないのでなかなか難しいですが、結果から意志決定プロセスへのフィードバックを日常的に積み重ねていけば、ある程度はつかめるのではないでしょうか。EQ理論によれば、適切に感情を利用していくことで、そういった偏りを補正できます。
(1) 堀内 浩二 『問題解決クイックガイド 行動を成果につなげる9つのステップ』(booknest、2010年)
(2) E.B.ゼックミスタ他 『クリティカルシンキング (入門篇)』 (北大路書房、1996年)
(3) デイビッド・R・カルーソ他 『EQマネージャー』 (東洋経済新報社、2004年)