東北地方太平洋沖地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申しあげます。
●自社ならではの貢献を問う
地震のとき、わたしは東京で若手管理職向けの企業研修のために地下道を歩いていました。そのままオフィスに入り、主催企業と相談のうえ、研修の実施を決めました。状況の深刻さを実感したのは、夜になってオフィスを出てからのことです。
徒歩で帰宅する道すがら、今日の流れを反芻していました。日本に十年単位での影響を与えるであろう大きな災害。その直後に、皆で語り合う時間を持てていたわけです。それがよく分かっていたとしたら、研修の内容をどう変えていただろうか。それを考えていました。
おそらく「自社は何をすべきか?」を考える時間にあてていたでしょう。人財を含めた会社の資産が保護され、企業活動が維持できるという見通しを立てられたことを前提として、救済・復興にどう貢献できるかを考えるということです。ディスカッションでは寄付などの経済的な支援よりも、本業での貢献に絞るべきでしょう。
重要なのは、問いです。「何をすべきか?」だけでは、発想が広がりません。歩きながらあれこれ考えて、下記のような問いに落ち着きました。
他のいつでもない「今」ならではの、
他の誰でもない「わが組織」ならではの、
最善の貢献とは何か?
このコラムを書いている時点で、執筆からちょうど1週間が経っています。ここまでの各企業の取り組みを「この会社ならでは」という観点で見てみると、Googleの速さが目立っていましたね。まとめサイトや Person Finder(消息情報) などのサービスを、自社の基盤の上で矢継ぎ早に提供していました。もちろん寄付や無料化も、とてもありがたい貢献ですが、Googleのサービス提供の速さには、お金では買えない価値があったと思います。
上の問いは、企業の本質的な強みを考えさせてくれます。先週、あの場でこの問いを問うことこそが、個人の意志決定支援を理念に掲げる当社ならではの貢献だった。その貴重な機会を逃したと、いま感じています。
●長期戦に向けて
さて、良くも悪くも、初動の速さが問われる時期を過ぎつつあります。誰もが震災でいろいろなことを強くお感じになり、なにがしかの行動意欲にかられたと思います。わたしもその一人です。しかし、あらゆる情動に共通しているのは、それが「過ぎ去っていく」ということです。情動は外界の変化に対する応答なので、感じ続けるということができません。
復興は続きます。情動ベースの反射的な行動意欲が収まった後、何をめざして行動するかを、個人も組織も問い直さなくてはなりません。
他のいつでもない「今」ならではの、
他の誰でもない「わが組織」ならではの、
最善の貢献とは何か?
この「今」を、「地震直後の今」から「復興期の今」へとシフトさせつつ、考え、行動していきたいと思います。