ケース「情報サイトA社」
A社は、複数の情報サイトを運営しているベンチャー企業。マネジャーのBさんは、ある健康情報サイトの買収を検討するよう指示された。さっそく部下のCさんに調査を命じたが、なかなか決め手となるような情報が上がってこない。そうこうしているうちに、当のサイトは運営者の都合でクローズしてしまう。Bさんは「拙速に事を進めないでよかった…」と安心し、日々の業務に戻った。
情報がないときは「決め打ち」で創り出す
意志決定の良し悪しは、結果では測ることができません。今回は、何もしないことが良い結果につながったように見えます。しかし早めに買収・テコ入れしていれば、大きく成長させることができたかもしれません。あるいは、競合他社がそれを先んじて行ったかもしれません。
決めないうちに時が流れ、大きな変化・不可逆な変化が起きるなどして、決断せずに済んでしまうことはよくあります。待つことで選択肢を絞るのも有効ですが、いつも流れに任せていると、機を逃す事もあります。
Bさんは「決め手となるような情報」を待っていました。しかし、そもそも「決め手となるような情報」とは何でしょうか。それについてのイメージを持たないまま、部下のCさんに「検討するための調査」を依頼しても、Cさんも途方に暮れるばかりです。
「情報がなくて決められない」という場合、実は「決めるためにどんな情報があるべきかが分からない」ことが少なくありません。もとより「それがあれば誰もが決断できる、決定的な情報」など無いものと考えるべきでしょう。情報を集め、解釈を重ね、少しでも自分が納得できる道のりを作らなければなりません。
「決めるための情報」を探すために、まず結論を決め打ちしてみる。これはとても強力な方法です。例えばCさんに「例のサイトを買収して、君に運営を任せたい。半年で黒字化し、それを維持するための計画を立ててくれ」と依頼してみるということです。
目的地がはっきりしたことで、Cさんも具体的に考えることができます。具体的に計画を立てようとすると、様々な仮定を置かなければなりません。その仮定こそが、知るべき情報になります。
ただの「仮説」ではない
こう言うと、よく「要するに仮説思考ということですね」と言われます。その通りなのですが、仮説思考という言葉にはいくばくかの弱さがあります。
肝心なのは、できるだけ本気で決め打ちすること。批評家モードで買収する/しないの評価表を作るのではなく、どうしても買収するという強い気持ちを持つことです。そうすることで「必ず成功する!」と言い切るためにどうしても知りたいポイントが見えてきます。
疑似的に「本気で考える」ために、ディベートを試してみるのもよいと思います。勝ち負けのあるゲームは熱中を誘い本気を引き出すことができます。選択肢の分だけ支持者を割り当てて、お互いの主張の弱みを突くようにすれば、結論がどうであれ、決断のシナリオはより強固なものになるはずです。