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053 「問いへの答え」に応える

●もらった答えに「応える」ところまでが質問者の責任

質問と回答、Q&Aとよく言うように、問いと答えはセットです。しかし実務上は(生活上もそうなのですが)、問いと答えだけでは完結しません。質問者が答えに応えるまでがセットなのです。

たとえば、キャリアに悩んだ部下が「自分はどうすればよいのか」と質問に来たので、あなたは自分なりにアドバイスをしてあげました。ところが、部下からはその後何の報告もない。こういうとき、不満に思いますよね。あなたにとっては、自分の回答(アドバイス)がどのように汲み取られたかを知って初めて、この相談にオチが付くわけです。実際、若手向けのビジネス書には、相談をした先輩には後で経過報告をしよう、なんて書いてあります。

これは、立場が逆でも同じです。たとえば、あなたがこの半期の業績の総括をすべく、不振だった商品Aの担当者に問いかけました。

「原因について、何か思うことがあればなんでも挙げてくれないか?」

こういうとき、質問者が想定もしていなかった答えが返ってくることがあります。たとえば部下が

「…やはり、部のビジョンがはっきりしないせいではないでしょうか」

と答え、これはあなたの期待からはかけ離れた答えだったとしましょう。あなたはどう反応するでしょうか。

「バカ、商品Aの売り上げの話をしているんだよ」とか
「なるほど、それも遠因かもしれないな。その問題は別に扱おう。商品Aの売上についてはどうかな?」とか、あるいは
「……」と絶句してしまうかもしれません。

あなたが何を言ったにせよ、あるいは何も言わなかったにせよ、その応答こそ、答えた部下が気にするところです。「○○について聞かれた」ことよりも、「○○について答えたら喜ばれた/無視された」ことのほうが記憶に残ります。そういった問答の積み重ねの中で、我々は相手がどれくらい自分を認めてくれているかを推し測ろうとしています。

●意志決定を促すために、質問者が注意すべきこと

したがって、部下の意志決定力を高めたいと願うマネジャーは「問い」そのものだけでなく、問いの「答えへの応えかた」を練っておく必要があります。

先日、部への参画意識を高めようと、ある部長が部下から事業アイディアを募ったという話を聞きました。幸いにも予想を越える数のアイディアが寄せられたのですが、内容を読んで失望を禁じえなかったとのこと。彼の期待水準からすると、検討に耐えるようなアイディアはごく少数だったそうです。

彼はマネジャーとして問いかけ、部下は答えました。勝負はここから。部下の答えへの応えかたこそが、部下の参画意識を左右します。

直近のいくつかの経験を思い出して、問いを立てる時点で注意すべきことをまとめてみます。

1.答えへの応えが問われていることを意識する

そもそも、このQ&A&R(RはRespond、応答の意)とでも呼ぶべきセットを意識するだけでも、変わります。質問者は、答えへの応答によって自らの姿勢を相手にさらけ出しているという事実を自覚すると「思いつきで聞いてみて、自分の期待と違ったらバッサリ」といったパターンの会話は減ると思います。

2. 答えを予測する

研修などで練習しているとしばしばあるのが、凝った問いを投げかけて、相手が「……」と沈黙してしまい、そこから慌ててしまうケース。セールスパーソンはよく想定問答を練習しますが、相手の反応を予測して二の矢・三の矢を用意するエクササイズは有効だと思います。

3. 責任を持って応えられる問いを投げかける

考えさせたくて大きな問いを投げておきながら、いざ答えが返ってくると「それは社長に言ってくれ」と、どこかちぐはぐなケースもあります。GEのリーダーシップ育成手法であるワークアウトでは、チームに課題を与える役の上司は入念に課題を練るそうです。なぜかといえば、チームからの提案に対して、その場でYes/No/条件付きYesで、応えなければならないから。