●組織で評価されない人の共通点
能力があっても組織で評価されない人には、どのような特徴があるのか。『残念な人の仕事の中身〜世界中の調査からわかった「組織で評価されない人」の共通点』という本(1)は、目次からすでにインパクトを放っています。引用をお目にかけると:
- 【自分が見えない】
- 「言わずもがな」が通じない
- 自分の役割がわかっていない
- なんでも大げさに言う
- 自分の短所が自覚できない
- すぐ気分に振りまわされてしまう
- 【マイペース】
- 必要以上に細かすぎる
- 皮肉をユーモアと思っている
- 人の意見をすぐに否定する
- つねにのんびり構えている
- 優先順位を間違っている
- 【協力できない】
- 数字ですべてを割り切ろうとする
- 人のいらだちがわからない
- ビジネスライクな対応ができない
- 相手を偉そうにおさえこむ
- 【自信過剰】
- ひとりで仕事を抱えてしまう
- つねに人のせいにしている
- 絶対に譲らない
- 自分だけで仕事ができると思っている
- うまく人を動かすことができない
- 【変化を嫌う】
- 古いやり方に固執する
- なれあいで仕事をしている
- 世代の違う人間と話せない
- 古い話にばかりこだわっている
組織で評価されない人の行動パターン23 – *ListFreak
著者はこれらのパターンに通底する12の特徴を見いだし、処方箋を与えています(2)。
わたしはこのリスト(本の目次)を見て、ざっと半分は感情のマネジメントに密接にかかわる問題だと思いました。感情知能がビジネスの現場でのパフォーマンスに正の相関を持っていることを示す資料のように感じられたのです。
●「感情にかしこくない」とは、たとえばこういうこと
「組織で評価されない人」のふるまいを感情知能という観点から考えるとどうなるか、リストの先頭の『「言わずもがな」が通じない』を例にとって、すこし詳しく見てみましょう。
エール大学のピーター・サロベイ教授らが提唱しているEI理論(EQ理論)によれば、感情知能は4つのブランチ(分野)に分類されています(3)。
その1番目は「感情の識別」です。これは、自分や他人の感情を読み、また感情を表現する能力と定義されています。相手が言外に伝えたいメッセージを読み取ることがなければ、当然ながらそれに応じた行動は取れません。
2番目は「感情の利用」です。たとえば共感的な気持ちをつくって相手の話を聞くことができれば、先の「識別」能力と相まって、より深く相手の真情を引き出すことができます。
3番目は「感情の理解」です。感情の識別・利用の重要性を本能的に理解して実践できている人もいれば、そうでない人もいます。しかし人の感情の動きには共通性があり、またある程度は理論化もされているので、後者であっても理解の部分は知識によって補うことができます。たとえば、感情に無頓着な人でも、そもそも『人は「言わずもがな」で感情の共有を求める性質がある』ということを知識として学ぶことはできます。ビジネス会話の中でもデータの共有だけでなく感情の共有にも注意を払うようになれれば、識別・利用の能力を高められます。
4番目は「感情の調整」です。直訳である「感情のマネジメント」のほうが、理解しやすいかもしれません。目的のために、上記の3つの能力を使いこなす力といえばよいでしょうか。相手から読み取った「言わずもがな」を意思決定に組み入れ、行動を選択するということです。何が最適な行動かは、もちろんケースバイケースです。たとえば真意をきちんと言語化してもらうことかもしれませんし、思いを受け取ったこと示すため、同じ表情をつくって返すことかもしれません。
23の行動パターンから、特に感情に関わるスキルを鍛えることで改善が可能と思える行動パターンを選り抜いてみました。カッコ内は特に関係が強いと思われるブランチです(4つのブランチが独立して働くわけではないので、あくまでも目安です。また「調整」ブランチは事実上すべての行動パターンに関係しますが、記述を省略しています)。
- 「言わずもがな」が通じない(識別・利用)
- 自分の短所が自覚できない(識別)
- すぐ気分に振りまわされてしまう(識別)
- 皮肉をユーモアと思っている(識別・理解)
- 人の意見をすぐに否定する(識別・理解)
- つねにのんびり構えている(利用)
- 数字ですべてを割り切ろうとする(理解)
- 人のいらだちがわからない(識別・利用)
- ビジネスライクな対応ができない(利用)
- 相手を偉そうにおさえこむ(識別・理解)
- 絶対に譲らない(理解)
- うまく人を動かすことができない(調整)
- 世代の違う人間と話せない(識別・理解)
わたし自身は「皮肉をユーモアと思っている」を見て、愕然 → 落胆 → 納得という気持ちになりました。というのは、自分にそういう傾向があることを知ってはいたのですが、23の好ましくない振る舞いの1つに挙げられるほどではないと(図々しくも)思っていたからです。
相手が近しい間柄になると、冗談のつもりが皮肉になって口から出てしまいます。これはある種の反応パターンとして根付いてしまっていますから、リアルタイム性の高い会話のなかで改善するには、かなり努力が必要そうです。しかしサロベイ教授はこう言っています(4)。
「感情に意識を向けるだけで、感情知能は改善される。」
この言葉を糧に、習慣の改善に取り組みたいと思います。
(1) ロバート・W・ゴールドファーブ 『残念な人の仕事の中身〜世界中の調査からわかった「組織で評価されない人」の共通点』(大和書房、2011年)
(2) 組織で評価されない人の12の特徴 – *ListFreak
(3) EQ(感情知能)の4ブランチ – *ListFreak