「グレムリン」という言葉は、心理学やコーチングの分野では「自滅的な行動」という意味で用いられる。
Another type of “gremlin” originates from psychology and the professional life coaching fields. In this sense a gremlin is one’s self-defeating behavior.
「グレムリン」というとわたしは映画を思い出しますが、もともとは伝承上の生きものらしいですね。冒頭に引用したように、自滅的な行動あるいは「人を自滅的な行動に追いやるもの」をグレムリンと呼ぶことがあります。
先日読んだ本では、人のこころに巣くうネガティブ思考を「グレムリン」と名づけ、詳細な分類を行っていました(1)。たとえば、他人の心を勝手に憶測して「あの人は、自分のことをバカだと思っているにちがいない……」とささやくのは”Mind Reading Gremlin”(心を読むグレムリン)という具合です。
ちょっとしたグレムリン図鑑のようで面白かったので、意訳をお目にかけます。「グレムリン」は言葉として少々長いので「子鬼」としました。
- 【読心子鬼】他人の心を憶測する
「人は自分を○○と思っているにちがいない」- 【予言子鬼】否定的な未来を予言する
「きっと悪いことが起きる」- 【絶望子鬼】物事が好転しないと決めつける
「いつもこうなってしまうんだ」「そんな(いい)ことは決して起きない」- 【自責子鬼】罪悪感を煽る
「あのとき、ああすべきだったのに」- 【白黒子鬼】すべてを白か黒かで決めつけ、中間を認めない
「まだ失敗するとは、まったく進歩がない」- 【否定子鬼】何もかも否定する
「どこにもいいところがない」- 【感情子鬼】感情的にさせる
「失敗しそうだ……」「ちくしょう!もうダメだ!」- 【類型子鬼】レッテルを貼る
「しょせん自分は○○だから……」- 【非難子鬼】自分以外の何かのせいにする
「○○の/誰々のせいで……」- 【完璧子鬼】決して満足しない
「あと1点で満点だったのに、なんて馬鹿なんだ」10匹の子鬼(10種類のネガティブ思考) – *ListFreak
自分の中の反応パターン(この場合はネガティブ思考)を擬人化(擬「子鬼」化)するアイディアはいいですね。そうすることで自分の中に浮かんでくる思考を客観的に捉えて反論しやすくなるように思えます。
とはいえ、10匹ではいかにも多くて覚えきれません。子鬼たちの役割を眺めて、4匹にまとめてみました:
- 【卑下子鬼】 (現在の自分に対するネガティブ思考)自分を責める・卑下する
- 【他責子鬼】 (現在の環境に対するネガティブ思考)自分以外の何かのせいにする
- 【絶望子鬼】 (未来に対するネガティブ思考)現在の状況が今後も変わらないと思う
- 【後悔子鬼】 (過去に対するネガティブ思考)過ぎたことをくよくよと悩む
……ここまでまとめてみると、よく似たフレームワークが思い出されます。
- 【自己】 「私は人生の落伍者だ」
- 【世界】 「世間は不公平だ」
- 【未来】 「もうまったく将来に望みがない」
抑うつ気分が高い人に特徴的な否定的認知の3要素 – *ListFreak
過去があっての現在なので、もう一段抽象化して「後悔子鬼」を「卑下子鬼」に含めれば、子鬼たちをこのフレームワークに収めることも可能でしょう。しかしリストを比較してみると、後悔は一匹の子鬼として意識しておいたほうがよさそうに思えます。
卑下・他責・絶望・後悔。子鬼も4匹であれば、何とか見張っておけそうな気がします。
(1) John, L. Schinnerer “Guide to Self: The Beginner’s Guide to Managing Emotion and Thought” (AuthorHouse, 2006)