ソリューションフォーカスの基本的な発想は次のようなものです:
青木 安輝『解決志向(ソリューションフォーカス)の実践マネジメント』 (河出書房新社、2006年)
- こわれていないものを直そうとするな
- うまくいっていることを見つけ、それを増やす
- うまくいっていないなら、違うことをやる
ソリューションフォーカス・アプローチの基本哲学 – *ListFreak
ソリューションフォーカスの有効性を考えるには、典型的な問題解決アプローチの落とし穴を考えることが役に立ちます。
あるべき姿と現状とのギャップを分析し、その原因を突き止め、解消を図る。この問題解決アプローチには二つの落とし穴があります。
一つは、現状があるべき姿に達している場合はギャップがないので考慮の対象にならないこと。結果として「いまうまくいっていること」よりも「うまくいっていないこと」に目が向きがちになります。
もう一つは、問題によっては原因を追究する行為そのものが問題を大きくしてしまうこと。これは心理的な問題や人間関係の問題に顕著です。たとえば気分が落ち込んでいるときにその原因を考えることは、ますます気分を落ち込ませる可能性があります。
ソリューションフォーカス(解決志向)アプローチは、未来に望むことを明確に描いたうえで「いまうまくいっていること」に意識を向けることでそういった落とし穴を回避し、次の一歩を見出す可能性を高めます。
問題の分析でなく解決に焦点を当てるアプローチは、心理療法として注目され、方法論が開発されてきました。次に紹介する MECSTAT はその代表的なものです。
MECSTAT – 解決志向の会話のステップ – *ListFreak
- Miracle questions(ミラクル・クエスチョン): 望む未来を描いてもらう。「寝ている間に奇跡が起きて問題が解決していたとする。あなたは何によって問題が解決していることに気づくだろうか?」
- Exception questions(例外探しの質問): 問題が発生しなかった状況を思い出してもらう。「問題が起きなかった、例外的・奇跡的な状況は? それを再現できるとしたら?」
- Coping questions(コーピング・クエスチョン): 問題にどう対処してきたかを思い出してもらう。「そんな大変な状況で、これまでどうやって対処してきたのか?」
- Scaling questions(スケーリング・クエスチョン): 問題の重要度を評価することで、問題解決に向けたクライアントの思考を促す。「1を最低、10を最高とすると、今日は?」「3を3.5にするためにできそうなことは?」
- Time-out(タイムアウト): たとえば相談に乗る側がいったん席を外すことで、相談する側は会話を振り返り内省できる。相談に乗る側も称賛の言葉をどうかけるかを考える時間が持てる。
- Accolades(称賛): これまで達成してきたことを確認し、その過程で発揮した強みや能力を見出す手助けをする。相手が発したポジティブな言葉を返す。
- Task(タスク): タイムアウトの後、セッションの最後に、クライアントが望むなら「宿題」を一緒に考える。「例外を探してメモする」など。
発する4種類の質問をSolventの4マスに置いてみると、みごとに左列に収まります。ソリューションフォーカスにおいては右下(現在×原因)に話題をふることは基本的にはありません。ただ、会話を通じて自身の強みや能力を確認・発見し、それが自信につながるので、相談に乗る側は暗黙の裡に右下に思いをはせることになります。